盛岡そして宮沢賢治1(盛岡市) | 盛岡そして宮沢賢治2(宮沢賢治) |
盛岡そして宮沢賢治 2 (宮沢賢治)
制作協力: ▼壱鋳堂 |
材木町は材木問屋の町としてスタート、400年の歴史を有す。材木町のメインストリートは「いーはとーぶアベニュー」で、その両サイドには情緒溢れるお店が数多く並ぶ。通りには、宮沢賢治に関連する6座(六つのオブジェ)が点在し、通りのシンボルとなっている。材木町は国土交通省・手づくり郷土賞を2度受賞している。 いーはとーぶアベニューには「光原社」なる店舗がある。南部鉄器、全国の漆器、民芸品、家具、岩手の食品等を扱っている瀟洒な店舗である。この店は、大正13年(1924)宮沢賢治の「注文の多い料理店」を発刊したところである。また「光原社」なる社名は賢治が名づけている。賢治とこの店の創業者は盛岡高等農林学校の先輩、後輩の関係とのことだ。いくつかの店、喫茶店が寄り集まり、中央に中庭を配している。それらは独特な空間を構成して、個性的、エキゾチックで、すべての建造物が心地よく調和している。そこはまるで宮沢賢治の童話の世界を再現しているようだ。ここの喫茶館へ入り、コーヒーを飲む。盛岡に住んだら、毎日でも通いたくなるだろう。 |
拡大 材木町 いーはとーぶアベニュー |
拡大 材木町 いーはとーぶアベニュー |
凝ったデザインの店舗が多い。 | 拡大 宮沢賢治の像・石座。 六座のひとつ。他に 星座、絹座、詩座、音座、花座がある。 |
拡大 光原社。本店 |
拡大 本店の裏。近代建築のようだ。 |
拡大 (左)マヂエル館 (右)可否館 可否館でコーヒーを飲んだ。 まるで宮沢賢治の世界。 |
建物のひとつ。 |
拡大 この建物も趣がある。 |
拡大 宮沢賢治の記念碑か。 |
宮沢賢治の作品を読むなどと言うことは、全く縁がなかった。しかし子どもの頃、原文ではなくやさしい文体、要約された文章で、いくつかの作品に触れていたに違いないと感じた。それは今回十数点作品を読んでみて、作品の短いセンテンスの中から、とらえ所がないが懐かしい感情がわき上がってきたからだ。宮沢賢治の代表作の中に「銀河鉄道の夜」がある。今回読んだ作品の中のひとつ。別れを伴う、静かで、悲しい、こころに余韻を残す小説である。 |
「銀河鉄道の夜」は実に感覚的で、イメージが膨らむ世界である。・・・舞台は銀河、そして電気かアルコールで走るらしい機関車。その列車は、石炭で走る蒸気機関車のように、時々汽笛を鳴らす。さらに列車は、車輪と線路、枕木から、あの等間隔のリズムを奏で、物語の進行に合わせ、その舞台の根底を常に支え、時を刻んでいく。それはまるで深い眠りへ、優しく死へ誘うロマン派のピアノの低音部のようだ。そして車窓からの景色は、濃い青、紫など深いトーンを基調に銀色、赤、オレンジなどの明るい彩色を交えて、この世のものと思えない色彩、色調の世界、桃源郷の世界を繰り広げる。さらに銀河は、異次元の粒子で構成されているにもかかわらず、現世の姿、具象の形・世界をして、天上の姿を展開させる。・・・感覚的世界ではあるが、賢治の銀河は決して無機質的な世界ではない。私達はその世界で想像を駆使して、遊ぶことが、宇宙遊泳を楽しむことができるのだ。 銀河を走る夜汽車の中でジョバンニとカンパネルラを中心に乗客達の会話が、静かに展開する。そこで展開される話は人間に対し、深い慈愛や敬虔な祈りに満ちている。そして「自己犠牲」、「献身」、「人の幸福」などのモチーフが度々登場する。「銀河鉄道の夜」は決してSF小説ではない。最後のシーンでは、 ジョバンニが銀河の旅から地球に戻って?(夢から覚めて?)現実の世界で、カンパネルラの死を知る。(カンパネルラは川に落ちた友達のザネリを助けるため川に飛び込み、行方不明になる)しかし、ジョバンニは思う。カンパネルラは銀河のはずれにいると。ジョバンニは銀河鉄道の旅を通してカンパネルラとのお別れをしたのだ。少年はつらい別れを経験した。最後にいちもくさんにお母さんのいる家へ向かうのだが・・・・そこで少年の胸中に去来した思いは。・・・・最後のシーンは強く胸を打つ。その静かな物語の進行と深い静けさの中で、私たちは賢治の描くどこか切ないリリシズムと出会う。 今回、10作ほど宮沢賢治の小説にふれた。その中で、印象に残った作品に「ポラーノ広場」がある。最後に少年が決意を述べるシーンがあるのだが、それまでの話の展開が、その決意の言葉で一気に輝き出す。決して奇をてらった言葉ではないのだが、美しい。ぜひ読んでもらいたい作品だ。 最後に、詩が掲載されている。それをここで紹介したい。実はこの詩、私の所属する合唱団の愛唱歌となっている。(林光作曲)
|
下の画像は、ブックエンド 「風の賢治」。宮沢賢治に興味のある方はすぐに賢治と分かると思う。実はこれ、弊社に展示している南部鉄器である。弊社では南部鉄器のインテリア製品もかなり展示している。▼七ツ森工房 ブックエンド 風の賢治 佐々木健太郎 作 |
盛岡そして宮沢賢治1(盛岡市) | 盛岡そして宮沢賢治2(宮沢賢治) |