家庭で揚げ物を上手に

左巻健男 稲山ますみ共著 「科学的に正しい料理のコツ」 日本実業出版社 より 
油の選択と温度管理

油の種類
●「カラッ系」・・・ごま油 サラダ油 天ぷら油 オリーブオイルなどの植物油を
●「しっとり系」・・・ヘッド ラードなどの動物性脂肪

温度
●内部を高温にする必要がない食材、小さい(薄い)食材、熱が通りやすい食材は、高温ですばやく揚げる。

●内部まで完全に加熱しなければならず、かつ内部に温度が伝わりにくい食材は、低温でゆっくり揚げる。

揚げ方
いくら油用温度計で温度を正確に測っても、うまく揚がらない経験はありませんか?
 その原因は、油の量と材料の量にあります。プロはフライヤーを用いて数百グラムの材料に四〇リットル近い油を使うのに対し、家庭では、一リットル程度の油に百グラム程度の材料を入れてしまいます。材料に対する油の量はプロの十分の一です。これでは材料を入れたとたんに油の温度は急降下。うまく揚がるわけがありません。
 この温度低下をカバーして、家庭で揚げ物を上手に揚げるためには、油の温度が低下しないように、できるだけたっぷりの油で、材料を少しずつ入れる必要があるのです。

弊社より:
南部鉄器のような肉厚の鋳鉄は、しっかり熱を鍋にため込みます。それにより素材を入れたときの温度低下を防ぐということは、ある意味で多量の油の役目を果たしてくれる同等の力といえます。弊社では、天ぷらなど揚げ物には、道具の比重が高いと申し上げている一番の理由です。


フライの場合

 揚げ物で気になるのは、まず上げる時間です。時間が早すぎると中まで揚がらず、遅いとまわりの衣を焦がしてしまいます。
 そんなときには、二度揚げがおすすめです。やり方としては1分程度揚げた後に一度取り出して、余熱を利用して三分程度そのままにします。そうすると中の温度がだんだんと上がってきます。その後、再度油の中に入れて二度目の揚げをします。そうすると中までしっかりと揚がったフライができあがります。肉や魚の唐揚げやポテトなど、とくにカラッとさせたいときに用います。

とんかつの場合

また、とんかつがうまく揚がらない原因としては、ひとつには、材料の豚肉自身に脂気が多い場合です。このときは、粉をつける前に布巾かペーパータオルなどで表面を押さえ、水気や脂気を吸い取ります。さらに小麦粉をだまにならない程度にしっかりつけるとよいでしょう。また、衣を二度つけるやりかたもあります。
 揚がっているかどうかの目安は「泡」と「音」です。最初は泡が勢いよく出てきますが、徐々に泡が減ってきます。また音も、低い音からだんだんと高い音に変化します。そのころに材料が浮き上がってきていれば、火が通っているというわけです。

▲岩鋳・天ぷら鍋 ▲久慈の砂鉄鍋