南部鉄器 どうしてこげにくい・どうしておいしい 

南部鉄器鋳鉄でできています。
鋳鉄※には普通の鉄板に比べ炭素の量が30倍以上も多く含まれています。
この炭素は細かな粒になっていて、表面にも露出しています。
炭素の粒は油と良くなじむので、油をたらすと、油の膜が一様に広がり、肉や野菜をのせてもこげつきにくいのです。そして使い込むほど、炭素に油がしみ込んで、油だめのようになり、調理のぐあいも大変よくなります。
油なじみのよい性質は、こびりつきを防ぐのみでなく、油が加熱された美味しい風味を味わうことができます。これはソテーのおいしさの大事な要素と考えています。
鋳鉄の道具と他の金属の道具との大きな違いは、厚みです。薄い板ですと熱が逃げやすく、温度がむらになり、局部的に加熱してしまうのでこげやすくなります。そのうえ野菜や肉をのせると、すぐ温度が下がって熱量が不足してしまいます。
厚い鋳鉄は熱をたくさん保有していますから、ふんわりした熱が全体に早くいき渡り、おいしい調理ができます。
どんな鍋やフライパンでも食材を入れれば、部分的に道具の表面温度が低下します。これは避けて通れない問題です。しかし道具がたくさんの熱を保有していれば、温度低下を最小限に抑えてくれます。南部鉄器は肉厚で熱量をたくさん貯め込んでくれること、そして「鉄」自体にその能力が高く、「おいしさ」という点でまさしく優れものなのです。


鋳鉄とは 通常のフライパン使用の「鉄」と科学的にみてどう違うのでしょうか?
南部鉄器の原料 鋳鉄
よくいわれる「鋼(はがね)」と鋳鉄の違いはどこにあるのでしょうか。

実は鋼も鋳鉄も鉄と炭素の合金で、炭素量の違いで区別されます。つまり、炭素量が2%以下を鋼、2%以上を鋳鉄として分類されています。
 鉄中の炭素量が2%以下では、炭素は鉄の中に完全に溶けており、どこに炭素があるのか顕微鏡で調べてみてもわかりません。これが鋼で、溶鉱炉から溶けて出てきた銑鉄(製綱用銑)を転炉(溶銑に直接酸素を噴射する炉のこと)に入れ、上から酸素を吹き付けて炭素、珪素の含有量を低下させてつくられます。
 いっぽう、炭素量が2%を越えると炭素は鉄の中に溶けることができなくなり、鉄が固まる時に黒鉛の形で現れてきます。これが鋳鉄です。

堀江 皓 著 「南部鉄器」 理工学社より


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