作家探訪・・・小島英一

Vol.40 発行責任:岡部登志子

-:きらら館のラインナップの中でもひときわ目を引くひよこの絵柄。今回の作家探訪はこのひよこの器が印象的な「童子窯(どうしよう)」の小島英一さんにお話を伺います。変わった窯のお名前ですね。

小島:そうですね。これは友人がつけてくれた名前なんです。「ああしようか、こうしようか、どうしようか」と言ってるうちに、「じゃあ、童子窯にしよう」って(笑)。やっぱりひよこのイメージが強かったんでしょうね。実際には全体の2~3割程度しか作っていないんですが・・・釉薬を工夫して、いろんな色の作品を作ったりしているんですよ。

-:そういえば小島さんは理工学舎さんより「陶芸の彩色技法」という本を出していらっしゃるんですよね。釉薬の基礎的バイブルとして高い評価を得ていらっしやるというお話を伺ったことがあります。

小島:ええ、なんだか今でも全国で毎日1冊とか2冊くらいずつ細々と売れているらしいですけど(笑)。自分は学校で陶芸を習ったことがないので、アカデミックなことにコンプレックスがあるんですよね。そのくせ、製陶所の土と釉薬は使いたくないっていう気持ちがあった。だから自力で勉強しようと思ったんです。本は絶対ウソが書けないでしよう?「この調合方法なら赤くなるよ」って書いて実際には黄色くなったら困ってしまう。だから必死になって勉強しました。

-:でも、どうやって勉強したのですか?

小島:窯業指導所の研究生になったんです。ただ、その頃は釉薬科なんてものはなくて、業者向けの研究でしたが・・・・・。当時、といっても30年前ですが、計算機すらなくて、計算尺というものを使って計算していました。釉薬には釉式というものがあって、アルカリとシリカ、アルミナに加えて鉱物をどの程度入れるかによって色がきまります。例えば銅を入れると赤や緑になりますし、コバルトを入れると青くなる。鉄だったら入れる量や焼く温度でいろんな色に変化します。そんなことを何年もかけて勉強してましたね。窯持ったばかりで仕事もあんまりなかったから、夢中になっていました。今は灰釉の本も書いていますが、さぼってばかりであまり進んでませんね(笑)

-:それでは、作品についてお伺いします。見たところ、食器が主としていらっしゃるのかなと思うのですが・・・・?

小島:そうですね。昔は畑の土をそのまま焼いたりしたけど、誰にも理解されなかった(笑)。オブジェで発言することが回りくどいような気もするし、できたその瞬間からゴミに近づいてしまう。それに、薫陶を受けた里中英人先生の言葉で、「30センチ四方でものがいえなければ、大きくても意味がない」と云われたことがあって、自分の内面と向き合って作ろうとすると、エネルギーがなかなか生まれてこなくて・・・・・
 今やっている食器というのは昔から好きだったし、食べるのも好き。それに奥が深くて面白い。でも、これからは無茶なことにもチャレンジしたいんですよね。泡がぶくぶく吹いたような釉薬とか、ヒビの入ったものとか。常識的でないことをして、そこから新しいものが生まれるといいなと思っています。あと、日本の伝統的な釉薬もやってみたいですね。いろいろやりたいことはあるけど、今はそのデーターとか資料とかを集めている最中。まだまだこれからですね。

-:ありがとうございました。


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