桜・千鳥ヶ淵

桜・千鳥ヶ淵 4月1日 日曜日
 東京の桜は本日が満開。今日は日曜日で、休日としては最後の花見の日となるのだろう。朝、自宅にて女房に、いくつか花見の候補地をあげたところ、即座に「千鳥ヶ淵」という答えが返ってきた。我が家から30分ほどで行ける。写真などでよく見かける石垣に桜。屈指の桜の名勝地だ。混雑のイライラばかり心配していては、機を逸する。さあ、でかけよう。

 千鳥ヶ淵に行くには、東西線の九段下駅で降りる。地下鉄の車内は混んではいなかったが、ホーム
に降りると、さすが出口に向かうまで間、長い列ができていた。途中、混雑を避けるため、エスカレーターをやめ、階段を選択した。思いのほか階段が長い。外に出ると正面に靖国神社、左手には大通りを挟んで田安門を中心に広がる桜。胸躍るすごい景観だ。しかし行列もすごい。さらに通りを横切るには少し先の歩道橋を登らなくてはいけない。行列がノロノロとあまり進んでいない様子。混雑を嫌い、とりあえず正面の靖国神社に向かった。参道に入ると、両脇は、食べ物屋の露天が軒を連ね、参道の奥の桜の下では、大勢の人が楽しげに宴の最中だ。私も強い誘惑に駆られたが、着いたばかり・・・ここはまず桜をめでること。強い意志を発揮して、思いとどまった。参道の少し奥に行くと正面にステージが設けられ、「さくらまつり」の看板がかけられ、お囃子が奏でられていた。この賑わいの原因は花見だけでなく、この祭りのせいでもあることがわかった。

 途中で参道を左に折れ、靖国通りの交差点を渡って、千鳥ヶ淵に向かう。しかし花見に向かう一般的な行列には参加せず、千鳥ヶ淵に平行に走る静かな通りを奥へ向かった。絶対に裏の入り口があるはずだ。左を時々ながめると、ビルの合間から桜が目に入る。少し行くと、左折できそうな人通りのすくない静かな通りが出現した。「あっ!桜だ」。混雑を回避して、行列に遭遇せず、目的地にたどり着いた。このなにか得をした気持ち。女房と急ぎ足で、お堀に沿った遊歩道へ向かい、あたりを見渡す。水面にたおやかに広がる桜が、堀にそって花の密度を保って並んで生い茂っている。その様子は淡紅色の雲が水平になびいているようだ。その奥の深い緑の森とのコントラストも見事だ。そして私の頭上から桜が覆い被さってくる。私たちは今桜に取り囲まれていた。

 しばらく遊歩道を奥へ向かい、途中折り返した。北の丸公園に向かうためだ。一度靖国通りへ出て、田安門から入る。私はカメラを持っていなかった。女房が田安門付近で、携帯のデジカメで何点か写真を撮った。先ほどの遊歩道からは写真を撮っていない。写真を撮るということを、その時思いつかなかったのだ。私も同じ携帯を持っているのだが、写真の撮り方が分からない。もっともメールも使えないのだが。この写真は千鳥ヶ淵そして牛ヶ渕を撮ったものだ。画質が良くないことが残念だ。

 田安門を入ると日本武道館がすぐに目に入る。先に進み日本武道館の正面に立つ。収容人員約15、000を誇る巨大な建造物だが、建物が八角形のためか、外から見るとあまり大きく感じない。今回女房は武道館を見るのが初めてで、中を見たいと言い出した。本日は小学校か中学校の剣道の全国大会が開催されていたが、運良く入場することができたので、最上階に登り、少しだけ観戦した。その空間の広さ、天井の高さに驚いていた。また階段が急で、その為か、会場が良く見渡せることに感心していた。私は、高校の時、柔道部で、確か当時武道館で鏡割りがあり、同時に行われた柔道の練習に参加させてもらったことがあった。その時の投げられて、畳に仰向けになった姿勢で見上げた天井が驚くほどに高かったことを、今でも鮮明に覚えている。武道館の正面あたりから、木々の間を縫って歩道がある。そこを奥へ向かうと、広い芝と樹木が鬱蒼と繁る場所にでる。ここが北の丸公園だ。中には池や小川があり、ここが東京の真ん中、と疑いたくなる。せせらぎでは、のんびりと鳥達が水浴びしていた。

 もう昼はかなりまわり、おなかがペコペコだ。ここでお弁当でも買って、昼食をとも思ったが、酒飲みの私としては、地元にもどって(といっても30分)ゆったり腰を落ち着けたかった。左画像は、帰りに、田安門より撮った桜の写真だ。描写の対象は桜、門の壁はが額縁のフチのようで、まるで絵画を見るようだ。ライトアップされた夜はどんな姿をみせるのだろう。この門から帰りの地下鉄の入り口まで、のろのろ歩き、電車に乗り込んだ。電車内はゆったり座れる程度に空いていた。私の住んでいる池袋までは、あっいう間。そこで、私の今日の本命である居酒屋へ。桜は今、目の前には無いけれども、私の目の奥にはしっかり焼き付いている。普段でもよくしゃべる私だが、今日は桜のせいか、さらに饒舌のようだ。「よくしゃべるね」と女房は呆れていた。そしてまた桜のせいか、いつもより酒のおかわりを、すんなりと許可してくれたのだった。



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