花街 神楽坂 (かぐらざか)

 花街という言葉は、私には縁がない。しかし花街という響きに、なにかとっても粋なものを感じるし、きっと風情ある街なのだということは、容易に想像できる。花街・神楽坂まで、我が家からは地下鉄で20分ちょっと。今回は、東京散策ということで、神楽坂を訪れた。
 着いてみると、意外にも観光客が多く、ここは観光地でもあるのだと、再認識した。街を歩いてみると、坂が多いことに、すぐ気づく。(神楽坂を始めとして、軽子坂、袖摺坂(そですりざか)、三念坂、・・・・・地図には坂の名が付く通りがいくつも記載されている。) 坂は石畳になっているところも多く、情緒に溢れ、落ち着きのある民家や、街の雰囲気に適合させようと工夫をこらした店舗と良く調和している。中には一般客の来店を拒むような、重々しい料亭もあるが、予想に反してそう数は多くない。
 今日は神楽坂で、昼食をとるつもりで家を出てきた。もうだいぶ昼をまわっていて、腹ぺこだ。

 神楽坂通りを大久保通りへ向かい、途中を左に折れ、かなり急な坂になっている「芸者小道」に入る。その小道の途中に目的地の別亭・鳥茶屋がある。(左画像)この小道は素敵だ。路地は急にL時に曲がっているので、見通しはきかない。折れたところで、どんな光景がまっているのかワクワクする。短い小道だが、坂と石畳と民家が作り出す空間が、とってもノスタルジックで、幸せ気分にさせてくれる。昼食では、大好きなお酒を少々飲んだ。ここは酒が飲みたくなる街だ。

 神楽坂通りの道沿いには善国寺(※毘沙門天)(左画像)がある。山手七福神のひとつだ。ここでは毎月寅の日に縁日がある。また境内には出世稲荷があり、その関係で、午の日にも縁日が開かれている。大変な賑わいのようだ。ここは全国に先駆け、始めて縁日での夜店を始めたと聞く。神楽坂はここを中心に発展してきたようだ。

※毘沙門天は、四天王の1つ。仏法や北方を守護する軍神。福徳を授けてくれる神。
 



 神楽坂の楽しさは、各有名な通り、横町はもちろんのこと、ふと曲がってみたくなる路地にある。訪れた地の風景が、自分の心の中に育まれた、おぼろげ、否、確固とした空間構成の美と一致した時、それは旅の最大の喜びだ。雄大な自然よりも、私は人工物の中にその喜びを見いだす。街、民家、道が好きだ。特に路地が大好きだ。路地には生活から生まれた様式美の自然な表出がある。いつまでも好きな空間に佇んでいたくなる。神楽坂にその路地を多く見いだした。


けやきの緑がまぶしい神楽坂通り。そして個性的なお店が軒を並べる横町。



 神楽坂は古くて新しい街だ。たくさんの個性的なレストラン、カフェが点在する。その多くの店が個性的でそして街に協調的だ。これは不思議だ。数寄屋作りの料亭や居酒屋などと問題なくマッチしている。
 左、下画像は通りがかりに発見したカフェだ。ここでは和風の蒸しまんじゅも店頭で販売している。建物、インテリアはレトロだ。レトロな店作りを目指すお店は多いが、ここはそれを徹底している。普通の民家を改築したものだが、外壁、看板、張り、照明、椅子、テーブル、調度品・・・すべて年代物、そしてリサイクルで統一している。徹底の度合いがすごい。そして無理なくすべてがつり合っている。そして狭い空間がとっても私たちに親和的だ。私はここでビールを注文した。酒が飲みたくなる空間だ。残念ながら店の名前は記憶していない。



▲こだわりやさん生活倶楽部へ ▲TOPページ