こだわり

 「こだわる」とは、本来あまりいいことを現す言葉ではなかったようです。例えば「そんなつまらないことにこだわって、そんなこと忘れちまいな!」とか。しかし時代が、ファーストフードに代表されるようにスピード、安さ、便利さのみを追求するようになると、生活の過程においての、ささやかな感動、楽しみ、小さな達成感のようなものが置き去りにされていきます。(それ自体悪いことでは、決してありません)そうした中でたぶんたまにはこだわったっていいじゃないとかいう会話が、当然私たちの中から自然に生まれ、「こだわり」がいい言葉として定着したのではないかと思われます。

 私たちについて言えば、私たちの道具達の中には、一見時代遅れと思える商品があります。しかし郷愁で選んでいる分けではありません。(郷愁もすこしあるかな?)トータルして優秀とみなして陳列しています。例えば「木のまな板は、扱いが面倒な面もありますが、調理素材との相性、相方の包丁のこと、自然素材の安心感」などを考えます。このようにどうしてこの商品を選んだかをできるだけ説明することを心がけています。また良品を少しでもお客様に「お安く」と考えています。しかし量販店的商品選定とそういう類の価格の安さは考えません。製品が素材として、性能として、デザインとして優秀で、当然その価格に見合うものを扱います。しかし一部有名ブランドのように必要以上にみかけの価値が付加されたものは、扱いたくありません。 華美に走りすぎた物はいやです......

 これらが私たちの具体的こだわりの一部です。これらは正しいとか間違っているとかの問題ではありません。100円ショップはそれなり大変楽しいし、またデパートは大好きです。でもうちはこういう店です。とちょっと知ってもらいたく思う次第です。




弊社のHPは高度なテクニックは使用していません。(というか実際はテクニックを持っていないというのが正解ですが)少し負け惜しみがあるかも知れませんが、これはHP上で中心となる商品や文章を浮かび上がらせる上で重要です。HP上を多く着飾ってしまうと、商品そのものより、装飾に目がいってしまいます。

弊社ではダイレクトメール、メールマガジンなどお客様に積極的に働きかける宣伝をまったく行っていません。(先々どうなるか分かりませんが?)私どもの製作時間というものは限られており、その範囲で自分たちが何を実行するか、何を重要視するかが、その店の個性であり、店のコンセプトであると思っています。与えられた時間は、できるだけ商品の説明、内容の充実、取材などに振り向けたいとい気持ちが強く、他のお店で行われているあたりまえの宣伝にはどうも興味が湧いてこないのです。でもほんとうはちょっと不安になることもあるのですが・・・

私が実店舗で買い物をする場合、どういう処が理想かというと、展示商品の構成が店主の思い入れをよく反映している。そして静かで、内装が心地よく、そして店員が優秀で、程良い節度を持ち、こちらの聞きたいことだけはまず的確に応えてくれる。決してでしゃばり過ぎない。挨拶は柔らかくどこかさりげない、それでいてありがとうの思いがこもっている。(大きな胴間声で「いらっしゃいませ」「ありがとうございました」挨拶されるのはどうも厭です。紋切り型の大きな張り上げた声は嫌いです。)そして価格もそこそこ納得できる。そういうお店です。こういうイメージを少しでも伝えられるようなネットのお店が出来たらと思っています。



弊社は大きな著名なモールなどに所属していません。これについてはお店を開店するにあたって結構悩みました。某モールなどは、集客力があり、システムが用意され、制作するひな形もあり、そしてアドバイスもしてくれる。あらゆる面で至れり尽くせりの感がありました。

 それなのにどうして所属しなかったかというと、たとえ峠の、野原のまったく目をひかない一件のお店でも、自主独立の、独自性のあるお店をだしたかったからです。住所(アドレス)だってちゃんとほしかった。住まい(URL)を決めるのにも約1ヶ月ぐらいかかったと記憶しています。でもそうした決意はいいのですが、やはり道のりは険しいもので、店をだす準備を始めてから開店まで1年以上費やしてしまいました。そしてその後オープンしても訪れてくれるお客様は数えるばかり。なんと言ったって、星の数ほどあるwebのお店があり、自分の店の存在を知っていただき、ご来店していただくことは容易でない。ほんとに身に染みて感じました。

 現在では、おかげさまで、多くのお客様にご来店いただけるようになりました。しかし現在に至るまでやっていることはほとんど変わりません。コツコツとテキスト作成の毎日です。ただ思うのです。独自性は決して奇をてらうことではなく、「コツコツとテキスト」だってそこへ至る道だと。派手な仕掛けはいらないと。(ほんとうはできない)そしてデーターベースと一定の書式に乗っかったカタログのようになってはいけないと。もちろん大きなモールに所属していても、独自性はいくらでも発揮できます。実際そういうお店も多くあります。しかし、私たちにとって、野原の、峠の一軒家でお店をだすことが、独自性を発揮するという気持ちを忘れるなという戒めであり、象徴になっていると思っています。「地味だけど、味のあるお店だ」そう言われるよう精進していきたいです。



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